――それは微笑ましいです! 苦労も吹き飛びそうですね。逆に、大変なのはどんなときですか?
河村:文化の違いに戸惑うことはあります。日本人の感覚だと、大事な会議があれば休日返上で出席しますよね。でも国によっては「土日は絶対に出勤しない」という考えの人もいる。そんなときには休日に働ける人を探したり、手当を出したりして対応しています。日本流のやり方を押しつけることはしません。相手の風習を重んじることが、この仕事では非常に重要です。
これは常に意識していて、たとえばイスラム圏でワークショップを開くときは、お祈りの時間を避けています。
――現地の方々を尊重する……。本当にそうだと思います。現状の開発計画には、どんな問題点があると考えていますか?
河村:社会的弱者への配慮が不十分だと感じることがあります。途上国支援は、経済発展に重きが置かれることが多い。GDPが伸びれば国が豊かになり、最終的に社会的弱者の支援になるという論理です。
ところが、経済発展の恩恵を受けられるのはせいぜい中間層まで。そこより上は高度な教育の機会を得てインターネットにアクセスして情報を得て伸びていく一方、下層の人々は十分な教育を受けられず格差が開くという結果になります。これを少しずつ解消していきたいと考えています。
――国と国民の双方が豊かになることが大切なのですね。今後、開発ではどんなことが重要になると考えていますか?
河村:環境への配慮がますます求められるのは間違いないでしょう。世界規模で考えるべき問題です。先進国がかつて行ったような開発をすれば、地球への負荷は計り知れません。環境を守りつつ途上国の生活を豊かにすることが、開発コンサルタントの役目です。
また、地場産業の果たす役割が大きくなってくると考えています。資源多消費型の経済開発ではなく、地場産業を活かした産業クラスターなどの振興です。これは、原材料に付加価値をつけてグローバル市場に出荷できることを理想としています。廃棄物を極力減らし、地元の雇用の創出にもなります。
――最後に、国際協力に関心がある方へメッセージをお願いします!
河村:興味があれば飛び込んでほしい。これに尽きます。
途上国の開発支援に関心はあるけれど、自信がないという人は多いのではないでしょうか。
しかし、専門分野の知識や技術がある程度があれば、経験を積むうちに自信はついてくるから大丈夫。また、スキルと同じくらい大切なのがコミュニケーション力、調整力、英語力です。困っている人の力になりたいという情熱を持っているのはもちろん、独りよがりにならずに関係者と協力し合える人に向いている職業だと思います。
開発コンサルタントに転身して、後悔していることはありません。強いて言えば、「20代のうちに英語を勉強しておけばよかった」「もっと早くこの世界に入ればよかった」ということ。若いときのほうが語学は身につきやすいし、始めるのが早ければ今頃はプロジェクトを統括する立場になっていたかもしれないと考えることがあります。
悩んで時間を浪費してしまうくらいなら、すぐにアクションを起こしたほうがいい。
これが、33歳で開発コンサルタントに転身した私からのアドバスです。
――興味深いお話をありがとうございました!
河村さんの活躍の場は途上国。ホテルのシャワーから水がほとんど出なかったり猛暑が続いたりと、日本とは比べものにならない過酷な環境です。でもインタビュー中はそんな苦労は微塵も見せず、仕事の魅力をお話してくださいました。
英語が完ぺきではないためコミュニケーションで苦労することがあるとおっしゃっていましたが、言葉で上手く表現できなくても河村さんの気持ちは現地の方々に必ず伝わっているはずです!
ますますのご活躍を期待しています。